コロナ後の経営

コロナの影響を受けて日本経済は大きなうねりの中にある。 生活様式や購買・流通など我々の消費行動は大きく変わりつつある。 同時に経営者は様々な施策を検討しなければならない。

「いつかは平時に戻る」と心中では分かっていても、それが何時なのかわからない。 そこまで企業体力が持つのかも確証もない。
飲食業などはテイクアウト等の新しい施策に動くしかない。待っていては客は来ないのだから。 地方の土産物屋や小売り等は、動きようもない。 ネット販売も既にやっているし、行ったことも無い地方の土産物を突然ネットで買うのも不自然で有り得ない。

経営者は考える
動くべきか・・動かざるべきか・・

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在宅勤務にしてテレワークに踏み切った企業も多くある。 業務をテレワークに変更しても作業効率が落ちなかったという理由もあるのだろう。 会社のフローをテレワークに切り替えて、思い切って都心のオフィステナントも解約した企業も少なくない。
しかし私はこの考えに懐疑的ではある。

在宅勤務(テレワーク)にすべき一番の理由は従業員の安全の為。 「満員電車・取引先にてのリスク・オフィスの密」を避けるために行う。
在宅勤務の目的は感染防止で本来は業務効率UPや経費削減が本来の目的ではない。
確かに都心にオフィスを持つことは高額な家賃と経費がかかる。 オフィスの処分で会社にとって大きな経費を削減できるのは事実だと思う。
しかし大事な事を忘れてはいないだろうか? 企業経営の中で仕事は一人では出来ない。チームで行う事で効率や大きな結果を出せる。
ビジネスでの1は、所詮1にすぎない。
しかし企業経営で1+1+1+1は4ではない。時に5になり、10になる事もある。
それは個が集になり大きな力を発揮する為である。

数年前に読売ジャイアンツは資金にものを言わせて各チームの4番バッターばかり5名もトレードでかき集めた。 打線は1番バッターから8番まで日本代表の様なチームになった。
打率3割以上、ホームランも30本近く打つバッターばかり。 各々がただひたすらに自分の長所であるバット振る事に集中した結果、チームの為に自らを犠牲にする者がいなくなった。
送りバントも無くなり、盗塁もしなくなった。 投手陣の成績も悪く、チームの勝利として機能しなくなった。 終わってみれば首位とは8ゲーム差も開いて終焉を迎える。結局優勝はできなかった。
どんなに素晴らしい人材を集めても、それぞれが個としてしか機能せず、勝つための集にはなれなかったのだ。


昨今テレビドラマでも「半沢直樹」を放映しているが、半沢直樹が銀行職員として様々な問題を克服できるのも、 協力してくれる仲間やチームや組織があっての事。 たった1人で難局を克服するのはほぼ不可能なのは見ていれば誰でもわかる。

仕事は1人では出来ない。チームで行うのである。 日本人は協調性があるので、組織での仕事に向いている。 人と人とが協力する組織力で、日本という小さな島国が、欧米諸国を相手にしてもGDP2位まで昇りつめた。

自宅勤務のテレワークという方法で組織として機能が十分に出来るのだろうか?
テレビ電話や自宅で会議する事は、「全員で目的を共有する」という物理的な目的を達成させる手段にはなるが、 我々が働くため、動くため、個々のエンジンである熱意や考え方(感情)を共有できるのだろうか? 昔から、商社などは、他国との打ち合わせでテレビ会議などは当たり前に使っていたはずだ。 しかし、契約や大事な話なら、必ず遠い現地まで足を運び、直接人と人とで話し合うのではないだろうか?

今までのビジネスのように都心のオフィスに集まる事は決して無駄ではなかったと思う。 ベッドタウンは千葉・埼玉・神奈川に分散しているので、都心なら皆が効率的に集まる事が出来る。 1ヶ所に集まる事で、気持ちを一つにして、チームとして同じ方向を向いて進む。 時には誰かに助けられ、また誰かを助ける事もあるだろう。
同調圧力というネガティブに捉える事も出来るが、それでも成果を上げてきた。 それが分かっていたからこそ、企業は高い家賃を支払ってでもオフィスを都心に借りて発展してきたのだとも思う。

テレワークの未来予想をしてみよう。

ある企業では、都心にオフィスが無くなって、社員が集まる場所も無くなった。 毎朝バーチャルのモニター会議だけになり、自分の行動を監視する人間もいない。 自宅に居ながら会議が始まり、隣の部屋には子供がいて、奥さんがテレビを見ている。 お昼は近くのファミレスで家族全員で食事の予定だ。
いよいよ会議が始まる。
上着はポロシャツだが、下はパジャマのまま。
15分前に起床したばかりだ。まだ少し寝ぼけてる。
会社の社長は「売上が下がった。何とかしろ」とモニターの向こうで熱く叫んでいる。
<俺だけに言われてるんじゃないよな?俺じゃなくてもこの会議を見ている他の誰かがやってくれるだろう。
モニターの右下に映ってる可愛い娘誰だろう? 会ったことも無いし話したことも無いよ。 学歴は?年齢は?仕事は出来るのかな?新入社員かな。中途かな?会議中だし他の人も写っているから聞けないよな?
今、発言したやつ若いのに偉そうだな。献身的な事言って、社長に気に入られたいのかな? 今日は16名もモニターに映ってるけど、実際に会ったこと無いやつが10名以上だよ。 腹空いたな。会議早く終わんねーかな。昨日テレビ録画したビデオ早く見たいんだよね。>

このような環境が「業務効率」という事なのだろうか?
これからの組織や企業が進むべき方向?
この環境で社員は自発的にどれだけ行動を起せるのかわからない。
精力的に、会社の為に、チームの為に、仕事の為に、誰かの為に、動けるのか? 少なくても私はそのようなモチベーションには絶対になれない。

テレワーク推進は、最終的に組織(チーム)で働き、個々よりも集団で大きな結果を残すという 従来の日本企業・日本経済の強みを消してしまう気がしてならない。
これからの「組織」や「企業」はある程度の効率を重んじる部分は否めない。 しかしその組織や企業を形成する人間という生き物は、合理性よりも「感情」で動くという事を忘れてはいけない。

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当社は旅行会社でもあるので「GOTOトラベル事業」の真っ最中である。
何故東京除外されたのか? 「東京はコロナの患者が多いから」という理由は全く論理的ではないし合理性に欠く。 観光業の救済策という本来の理念に反する。 日本国民の「東京は危険かも?」という感情論を情緒的に政策にハメただけだ。 整合性が無く、法の根拠もなく、国の政策なのに一部だけ除外するのは明らかにおかしい。
そもそも税金投入はその目的に対し公平に分配されるべきはず。 やるならば全国一斉にやるべきだし。やらないならば全部中止にすべきだ。

地方の旅行会社・交通機関・ホテル・お土産屋はある程度恩恵に預かれていると思う。それはそれでいい。 東京除外になっている現在、東京の関係者は間もなく限界に達する。 東京から関連倒産は増えてくるだろう。
売上がほとんどないのにも関わらず、運転資金1年分も銀行融資を受けられる企業は少ない。現実的に確保できても半年分だろう。 融資を受けて半年になる10月以降が危険信号だ。

「GOTOトラベル事業」は自民党の二階幹事長の肝入り案件だ。
当社は「(社)全国旅行業協会」に加盟しているが、そこの会長は二階俊博。 所謂、選挙支持母体だ。 だからゴールデンウィークの緊急事態宣言中という未来の見通しが立たない早期から「GOTOトラベル事業」の実施は決まっていた。
確かに消費者は喜ぶだろう。勿論、観光事業者側も喜んでいる。 来年の1月までは35%も安くなるのだから。その35%の割引分は全て国が補填してくれる。
確かにありがたいが、私は如何にも役人が作った愚策であると思っている。
35%OFFは来年の1月に終わる。 その後どうする?


今回20,000円のホテルはGOTOトラベル事業で13,000円で泊まれた。 貴方はそのホテルに来年以降に再度20,000円払って泊まりに行くだろうか?

もっと具体的に言えば・・・
バーゲンで40,000円スーツが26,000で売っていた。 縫製も着心地も素晴らしい物だった。 もう一着買おうと思ったら、バーゲンが終了していて40,000円に戻っていた。 それでも買う人はどれだけいるのだろうか?
26,000円で買えた物を、もう1着40,000円で購入したら損した気分にならないだろうか? 40,000円だったら同じスーツじゃなくて、別のコート買おうと思ないだろうか?
アパレル業界もバーゲンの後は売上が大幅に低迷する。 旅行業界は2月~4月は閑散期に入る。そこをどう乗り切る?
20年4月5月と緊急事態宣言中に営業を止めた分の取返しは、GOTOトラベル事業では回収できない程傷跡は大きい。 更には今後しばらくは簡単に観光消費も戻らない。

現在のGOTOトラベル事業のやり方では、「旅館やホテル・交通機関・観光業界」の中で 知恵が無い、行動を起さない、対策を取らない、者たちにとっては一時的な延命だけに終わってしまう。 GOTOトラベル事業後に一挙に潰れてしまう。

飲食業に限らず、集客の落ちた業界は様々な苦労しているし、努力している。 観光業界においても企業側も自発的な努力が絶対に必要。 企業側が無策でも補助が出る「GOTOトラベル事業」は業界の甘やかし以外の何物でもない。 税金で補助してもそんな企業はいずれ倒産する。
大事な事は、コロナ中も、コロナ後も、来訪を促す努力や施策を各業界は絶対に講じるべき。

設備投資でもいい。広告でもいい。現状を打開するのに経営者は施策を打たないといけない。
政府が期間限定で割引額を一律に補助する乱暴な対策は正しくない。
個々の施設や経営者が集客対策に知恵を絞り、その努力や施策に対し、 国が補助すべきだと思っている。
この危機こそ努力が必要。未来の対策も合わせて、知恵と勇気と行動で乗り越えないなければ、 観光業は来年倒産が続出して、GOTOトラベル事業自体が税金のばら撒きに終わってしまう。私はそう思う。

今日のコラムも、あくまでも私の独り言・・・
2年後に自分で読みかえすために、備忘録として書いておこうと思う。



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2020年08月26日付

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