社長の役目
ZOZOの前澤社長が退任した。
YAHOOへの売却額は4000億円とも言われる。
「ずいぶん儲けたろう」「良いタイミングで売ったな」「最近経営が失敗してたからな」「恋人と好きな事したいのだろう」
「経営に飽きたのだろう」
いろいろな人から勝手に様々なことを言われている。
意見する人は多いが、これほどまでの事業を起こせる人は100万人に1人もいない。
新しい可能性を探りその人が次のステージに行くのは、経済にとって、日本にとっても重要だ。
この人は天才だ。
私は足元にも及ばないが、少し自分の意見を書いてみる。
前にも書いたが、会社を運営する人は「社長」呼ばれる。
しかし社長の仕事は一つではないし、会社の置かれている状況に置いて必要なスキルは異なる。
・・会社の創成・・
大事なことは、新しい物を作り出す事。発想力。知力。0から1を作る能力。
人事や経営学や経理は関係ない。とにかく想像し創造すること。そして何も見えない未来へ進みだす勇気。
求められるのは、発想力・行動力・勇気。
・・会社の初期・・
とにかく物を売る。マーケティングなんて2の次。脚を棒にして歩き回る。徹夜してWEBを作る。
頭を下げてひたすらに物を売る。営業マンに徹する。必要なのは毎日徹夜する気力。
自己犠牲をしてでも目標を達成する根性。
求められるのは、1を10にする能力。体力・行動力・プライドを捨てる事。
・・会社の発展期・・
会社の規模と共に従業員も増える。銀行との付き合いや投資家にプレゼン。経理や人事など法務的な知識も必要。
物を販売するためのマーケティングなど経営学という学問もある程度必要。
求められるのは、10を1000にする能力。経営学・学問・世の中の仕組みを知る事。
・・会社の上場・・
社長の中でも経験できる人は皆無。会社の信用を上げ、未来への有望性を見つけ、
様々なTOPとの人脈を構築し、目標とされる売上・利益を確保し、
IPOに向かう証券会社や会計士・弁護士との細かい施策を行っていく。
求められるのは、人脈の構築・社長自身のアイデンティティの向上・メディア対策など
・・上場後・・
資本が増える事は、それだけ株主に向けて還元を求められる、売上と利益の拡大を目指し続ける必要がある。
既存ビジネスの拡大。新規事業の立ち上げ
求められるのは、株主に対する利益。株価の向上。配当も必要なので売上利益がマイナスになる事は許されない。
常に利益をだし企業規模が拡大する、施策と行動力。
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見てわかる通り、会社の状況により求められるスキルは異なる。
最初の頃は知識や学問も要らない。発想力と行動力と、人々の心を掴む商品を作れるかどうかが大事。
下手なロジックも学歴は役に立たない。脚を棒にして歩き、プライドを捨てて頭を下げて、寝れないほど毎日働く。
中卒でも高卒でも関係ない。一流大学の商学部を出てても人の心を動かす商品は簡単に思いつかないし、できない。
後半になるほど、店舗から会社、会社から企業に代わる。商品を売る事だけが仕事ではない。企業を経営する事が社長の仕事。
人事・経理・マーケティングも含めて専門の学問が必要になる。
だから大企業の社長は高学歴の社長が多い。彼らは創業者ではない。いわゆる企業現場からの出世組である。
必要なのは知識・学問なのである。
社長といえども明らかに一つの人格では無理。
アメリカでは、創業社長がある程度の規模でバイアウトして、会社を大きくするのは別の社長に代わるのが普通。
ZOZOの前澤社長は高卒だが1人でここまでやりぬいた。東大出ても、ハーバード出ても、ここまで出来るだろうか?
勉強が出来ることが秀才・天才ではない。
発想力・行動力・吸収力・統率力・環境力・私から言えば前澤社長は大天才だ。
会社や企業は拡大する事が宿命だ。
ましてや上場すれば、株主に配当を出さなければならない。株価も上げなくてはならない。
前澤社長は限界を感じたと思う。日本一のアパレルの通販サイトは作った。しかし上場企業故に更に拡大を求められる。
どうすれば企業規模を上げられるか?
自分は「ZOZOスーツ」も「ZOZOありがとキャンペーン」も含めて、様々な施策をしたがうまくいかない。
事実、ZOZOTOWNは既に日本一のアパレルサイト。
YAHOOなどの世界企業(巨額な顧客・マーケット資本を持つ企業)と組むこと以外、
ビジネスを大きくすることは不可能なのではないだろうか?
ライザップも同じ呪縛だと思う。
本業の拡大ペースに、資本額と資本家の要求が追い付かない。必要以上の企業拡大のスピードが要求される。
ライザップ社長は本業以外にアパレルの「ジーンズメイト」や「サンケイリビング・ぱど」などのメディア。
無関係の事業のM&Aを続けた。本業の充足よりも売上も含めた企業規模の拡大を目指した。株価の向上を目指す。
しかし失敗した。
上場するという事は企業価値の向上を求められる。それは従業員や社会に対してではなく、主に株主に対してである。
これに反旗を上げている起業家がいる。
ジャパネットたかたの高田会長である。
年商2000億の超大企業であるが、株式は一切公開していない。
株主に経営を左右されたくない。
株主に還元するよりも、佐世保・長崎の地元に貢献したいと考えている。だから本社はいまだに東京ではなく長崎だ。
毎年飛行機を貸し切って、経費を多く使い社員全員でグアム旅行に行っている。
株を公開していれば株主に反対されるだろうし認めないだろう。
そのようにして社員にも還元している。
大事なのは、株主に左右されない自社での意思決定。地元に貢献する事・そして社員なのだ。
上場しなくても会社は拡大し続けている。
私は所詮零細企業の社長だが、上記に共通する事はある。
従業員を預かる経営者であるならば会社の大小に関わらず規模の拡大は必須なのだ。
「我々はファミリーだから」「この方が安定するから」という経営者もいるが、それは経営者の怠慢であり、エゴに過ぎない。
未来永劫、今の市場規模が変わらない事はあり得ない。マーケットが小さくなったら、給料を払い続けられるのか?
社長自身は今の生活に満足できたとしても、社員は本当に満足しているのか?未来に不安はないのか?今の給料で良いのか?
現状で良いと思っている社員もいるかもしれないが、
社員は色々な考えを持っている。その考えや思いに応えるためには規模の拡大は常に必要である。
社長が現状でよいと妥協して考えるのであれば、社員の人生を背負う資格はない。社長1人で経営すべきだと思う。
経営者は「豊かな生活をしたいから」「欲深いから」売上にうるさい、利益ばかり追求している。と思われる。
それは必ずしも間違っているわけではないが、本質は違う。事実、情けないが私のように薄給の社長は多い。
社長はどんな時も規模の拡大を常に考えなければいけない。
それが起業家の企業家の正義なのだと私は思う。
創業者は自分の会社に人の何倍も思い入れがある。会社は自分の子供なのだから。
それでもこのタイミングでZOZOの前澤友作社長がバイアウトしたのは、高額で売る抜ける事よりも自分ではこれ以上の拡大は難しいと感じたのだと思う。
「高額で株を売りたかった」と冷やかす輩も多いが、yahooに買ってもらわなくても、自社株を高額で売り抜ける機会は今までに何回もあった。去年の株価は現在の1.5倍だ。それでも前澤社長は手放さなかった。まだ自分自身で改善・改革出来ると感じていたと思う。
創業者自らが離れる決意をして、今以上の大きな会社に託したのは、創業者として経営者として自分の限界を知った上で、従業員・顧客・企業の未来を思っての事。まさに経営者の正義だと思います。
前澤社長の次の活躍を期待しています。
お疲れさまでした。
次回へ
2019年09月15日付