ティーチングプロゴルファーの生き方1
最近はプロゴルファーの数が多すぎる気がします。
今日現在、PGAとLPGAで6,000名以上の会員が存在し、他のプロゴルフ団体も入れば1万人近くいるかもしれません。
30年前は「プロゴルファー」と言えば、ゴルファー達から羨望の眼差しで見られたものです。
PGAのプロテスト(競技出場資格)を受かった数十名しか毎年プロゴルファーになれなかったからです。
ところが2000年頃に、PGAというプロゴルフの統括団体が、トーナメント運営組織(JGTO)とプロゴルファーを管理する組織(現PGA)に分裂したことから大きく様相が変わります。
競技専用団体が出来た事で、PGAのプロテストを受けなくても、予選会から勝ち抜けばJGTOの試合に出られるようになりました。
石川遼も宮里優作も、PGAのプロテストを受けずに優勝しています。
その頃からプロゴルファーの定義が大きく変わりました。
プロゴルファーとは
「ライセンスを所持して、競技賞金やレッスンや広告等で生計を立てる者」
というイメージですがこれも微妙に違うようです。
定義は非常にシンプルです。アマチュアゴルファーでは無いものが、プロゴルファーなのです。
JGAのアマチュア規定は
「アマチュアゴルファーとは、ゴルフを報酬や営利を目的としないスポーツとしてプレーする人で、規則で決められている場合を除き、ゴルフ技術の指導や、ゴルフの手腕や名声があるためにしたことに対しての報酬を受け取らない人をいいます。」
だそうです。したがってライセンスも必要なく、自分が「プロゴルファー」と宣言すればプロゴルファーなのです。
トーナメントプロゴルファーの多くは、「競技で生計」を立てたいと考えてこの世界に入ってきたはずです。
しかしフィジカルが低下し、プロの試合では通用しなくなると競技から「レッスン」という違う職種に入ってきます。
誤解を恐れずに大変失礼な言い方をすると、「トーナメントプロ」の都落ちが「レッスンプロ」でもあったようです。
PGAもプロゴルファーのライセンス種類を増やしました。トーナメントプロのライセンスだけではなく、ティーチングプロのライセンスも新たに発行したのです。
これらは、「ゴルフのティーチング」という職種を目標に志して来たものには大きなチャンスです。
トーナメントプロほどに自分自身のゴルフ技術が無くても、教える技術があればライセンスを所持できるからです。
PGAの組織もNPOの団体です。プロゴルファーの協会員が増えれば、会費も増えて団体として潤います。この流れを止めるわけにはいきません。
ゴルフレッスンプロが所属する団体はこれ以外にもたくさんあります。
結局、レッスンプロゴルファーだらけになりました。
反面、アマチュアゴルフ人口は増えていません。むしろ減少傾向と言われています。
プロゴルファーがレッスンを行う練習場の施設も、前号でもお話しましたが減少の一途です。
教えを乞うアマチュアゴルファーも増えていません。
今後、どうなるのでしょう・・・・?
少し脱線して、私の経営している会社の話をしましょう。
当社では、一時期ネイルサロンや整体サロンを数店舗経営していました。(ネイルサロンは今でもやっていますが・・)
どちらも、1時間当たり5000~6000円の売上を取ります。健全経営には1分100円の収益を上げるビジネスです。
ところが最近、5,000円のメニューを1980円で行うネイルサロンや、1時間あたり2980円で行う整体サロンが、乱立してきます。
それは参入障壁が低い業界や、有資格者が急増した場合に起こりうる現象で、
店舗や技術者が市場にあふれ、需要より供給が増えすぎることから、通常の価格では集客できなくなる供給過多状況です。
結局ダンピングが横行し、経営的に生産性や健全性を無視した、価格破壊が始まります。
弁護士の業界も同じようです。国家資格は難易度最高峰ですが、裁判員裁判制度が出来てから、法曹界や大学の学部を拡充した事から
ライセンスを持っている弁護士は余っている状況です。
しかし訴訟件数や弁護士を必要とする状況は増えていません。
今や、企業顧問でも顧問料が月間1万円なんて弁護士も沢山います。
最近では多くの弁護士が破産しています。
一方、医療業界の、医師や看護師、薬剤師は慢性不足気味です。
売れない弁護士よりも看護師、薬剤師の方が現在では遥かに稼げます。
市場において需要と供給のバランスは重要なのです。
話を戻しましょう。
1時間2,000円の売上では、家賃や広告費や光熱費の経費を払ったら、何も残りません。
朝から晩まで1日中休まず働いても、自分の報酬は日当1万円も出ません。
コンビニでバイトした方がよっぽど稼げます。
ましてや、この単価であると営業時間の半分しかお客が来なければ、2ヶ月持たずに廃業でしょう。
ところがこのようなお店が増えすぎると、消費者はこの「1時間2,000円」の価格がスタンダードであると錯覚します。
廻りが2,000円ショップばかりですので、適正価格の「1時間当たり5000~6000円」では値段が高すぎるイメージが生じてしまいます。
こうなると、業界的には末期症状です。
人件費を時給500円位にしないと、経営は不可能です。
結局、私は全ての整体サロンを閉店しました。
でも仕方ありません。当サロンの営業に固執していたら当社内の他事業も煽りを食らったでしょう。
経営を続行するなら、現状を打開できる新しい戦略と、実現できる強い信念が必要です。
私にはありませんし出来ませんでした。打開策が無いなら引き際が重要です。
だから撤退を決めました。
現在の日本のゴルフレッスンの世界は、私が経験したこの状況に非常に似ています。
長くなったので次回へ
また次回へ
2017年3月26日付