荒天時の運行
東京に大雪が降り、また都市が機能を失われパニックになりました。
ゴルフ場も大打撃です。これで何日間も営業できません。
それどころか、除雪にゴルフ場のスタッフが何日間も駆り出されます。
写真を見てのとおり、まるでスキー場の様な雪で白色です。それをなんとか緑色に変えるのですから大変です。
今回の雪は深刻で、関東のゴルフ場はほぼ全滅になりました。しかしたった1カ所だけ降雪が無いゴルフ場がありました。
茨城と千葉の県境側の潮来から銚子エリアは雪ではなく雨だったのです。
海流の影響なのでしょうか?2014年の大雪の日も、成田からこの辺りのゴルフ場までは雪が降りませんでした。
私達は幸いにもこのゴルフ場と提携しており、急遽予約枠をキープしました。これでお客様をゴルフへ連れていけます。
問題なのは運行です。高速道路は通行止めが多く、全線通過していません。気温低下が予想され、残雪や雪解けの路面の凍結があります。
道路は渋滞も予想されます。安全運行は出来るでしょうか?
スタッフと意見を交わすことになります。運行すべきか?中止すべきか?
運行にネガティブな意見がスタッフにも多くあります。経営者の私は再度考えさせられました。
でも事の本質を考えれば答えは出ます。皆さんはどう考えますか?
話は少し脱線しますが、ここにヒントがあります。
新潟で大雪の為、15時間電車に閉じ込められたニュースを全てのテレビ局でやっていました。
なんとかならなかったのか?なぜ運行したのか?とJR東日本を糾弾する内容でした。
後日、JR新潟支社の責任者が記者会見でお詫びをしていました。
背景はこうです。
夕方の帰宅時間に大勢のお客が帰宅に向かっています。大雪の為、電車の本数を間引いて運行していました。
ホームに人があふれてきます。
JR側は「何とか無事に運行してお客様を帰宅させてあげたい。」そう思って運行したと思います。
しかし結果は止まってしまいました。
停止後も、JRはお客様を途中で降ろす判断をしませんでした。
「今降ろしても雪の中でお客は動きが取れない。ならば車内の方が安全だ。」
最終的に15時間閉じ込められる結果になりました。
お客様の気持ちもわかります。「早く降りたい。降りても大丈夫なはず。何故閉じ込めるんだ?」
食料補給のトラックも電車の側まで来ている。であるならば家族も車で迎えに来られるはず。
市役所のバスも出動要請できたのにJR側は断っている。
その間、JR側は何をしていたのでしょう?どう判断したのでしょう?
市役所のバスが救援に来ても10人乗りの小型バス・・「豪雪の中何往復必要か?乗客の目的地は様々なのにそのバスは何処に向かう事が公平なのか?」
「誰から乗せるのか?パニックにならないか?」
[豪雪の中降ろしたところで、帰りの足が無い乗客はどすべきか?車両にはトイレも暖房もある。待機させる方が安全ではないのか?]
その間に、運転士と車掌は外に出て何時間もスコップでひたすらに線路の雪を掻いていました。助けも来れない豪雪の状況で、一刻も早く動けるように。
そして時々車両に戻り、お客様の様子を見る事と指令室とのやり取り状況をアナウンスで何度も乗客に伝えていました。
運行したJRの判断は結果的に間違っていました。途中で停まってしまったわけですから。
しかし私はその後のJRの対応は正しかったと思います。体調を崩した人こそいましたが、事故も無く、死傷者も無く、この事案が終了したのですから。
結果が全てです。お客さまの安全を確保しました。
では、「なぜ運行したのか?」と問う人がいます。
それは運行する事が当然の業務だからです。プロですから安全上無理だと思ったら当然運行はしていません。
どのような状況下でも出来る限りの安全を担保し、目的地に向かうお客様を届ける事が交通機関に与えられた使命で業務なのです。
結果としてトラブルになりましたが、そこまでの鉄道事業者としての「安全を確保して出来る限り運行する」という判断は間違ってはいません。
「100%の安全が確約できないのならば、運行すべきでない」という人もいます。
残念ながら100%の安全は世の中にありません。電車でもバスでも飛行機でも100%を求めるならば乗車しない事です。
自然現象や人間がやる事に100%の安全はあり得ません。
貴方は風が吹く度に、雪の予報がある度に、「安全確保」という理由で運行を停めてしまう交通機関に信頼を置けますか?
予見のみで簡単に運行停止した場合、「安全運行してくれる」とありがたく感じますか? 「なんでプロなのに止まるの?対策や何とかならないの?」と不満に思いますか?
「安全を理由に運行を簡単に中止する」それは正しく見えますが、簡単に放棄したならプロの仕事では無いと思います。
出来る限りの予測と対策を行い、業務である以上、なんとか安全運行を可能にするのがプロフェッショナルなのだと思います。
運行者は、様々な問題を予見し、考え、対策を取り、「運行する」という考えを前提に、行動を起こします。
様々な事案を想定し、確率的に技術的に安全を担保できなくなった場合のみに、躊躇せずに運行を中止すべきなのです。
この問題には、色々な意見があると思います。
飛行機会社もバス会社も鉄道事業者も旅行会社も、多くの従業員を抱えて経営しています。 そしてその商品の提供を期待している消費者がいます。
どのような状況でも通常運行する為に対策を考える事が、事業者の責務です。
運送事業者である以上、顧客が一人でもいれば「運行する」事を前提に考える事が職務であり正しい事なのです。
それは売上が第一で、安全が2番目という事ではありません。「安全第一」とは業務の中で一番重要なのは安全という事です。
通常では無い状況で、それ相応の対策を取って運行すれば、むしろ企業にとっては赤字になる事だってあるのですから。
感情論で「安全よりも業務を優先するのか」という話ではないのです。
「安全」と「業務」は並列に議論できない事を理解して欲しいと思います。
仕事とは会社とは「自分達に求められている社会的役割や業務を遂行する」事だと思います。
その時に応じた対策や対応はどんな時でも必ず必要です。如何なる理由であれ「業務中止」をする時は万策尽きた時だと思います。
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2018年01月25日付