ゴルフ場運営企業の上場廃止2
上場企業は株主に利益を還元する必要がある事は前号で分かったと思います。
では、ゴルフ場においては、通常のコースとどういう違いが出てくるのでしょうか?
まず、上場すればゴルフ場も徹底的な利益追求をしなくてはいけません。
「ゴルフ場だって企業体なので利益追求するのは当たり前でしょう?」と考えるかもしれません。
しかし、ゴルフ場は不思議とそうではありません。
赤字が出ても平気な施設も多く存在します。
親会社の税金対策でやっているようなゴルフ場もあります。
赤字分はメンバーの年会費で補填するゴルフ場もあります。
ゴルフ場には運営方法を決定する「理事会」という組織が存在します。株式会社の取締役会みたいなものです。
理事会はゴルフ場のメンバーで構成される事が多く、理事会で話し合う内容はゴルフ場の環境改善や安定した経営についてです。
理事会のメンバーは通常、ゴルフ場の社員でも役員でもない場合が多いので、
ゴルフ場運営が赤字の場合は、「どのように補填するか?」という事も議題内容になりますが、「利益を多く出す」為の議論は皆無と言っていいでしょう。
ところが、今回のテーマである上場企業のゴルフ場運営の場合は「利益を出す」事を必要とされますので、運営の根本が変わってきます。
少し経営の話になりますが、
利益を出すために必要なのは、売上を上げるか、固定費の削減です。
まず、ゴルフ場で売上を上げる方法の一つを書いてみましょう。
ゴルフ場でプレーヤー達は約7分間隔でスタートしていきます。
スタート時間は電車のダイヤと一緒で、一組がラウンド中に5分遅れると後続組も進行やスタートが5分遅れてしまいます。
遅れる組が数組出現し、遅延時間の合計が30分になったとします。
最終組のスタートは30分遅れます。ラウンドも2時間15分で廻るべきところ、2時間45分かかってしまいます。
そのような事態を回避するために、通常であれば1時間あたり7~8組がスタートするところ、1組減らして6~7組で進行していきます。
本来プレーできるスタート時間の1組を1時間あたり1組分あえて空枠にする事で、
8時台にスタートしたプレーヤーの進行が遅れても、 9時台のスタートのプレーヤーは遅延の影響を受けずに、定刻でスタートできるのです。
この空枠をゴルフ場では「時間調整枠」と呼びます。
ゴルフプレーはほぼ毎日遅延する組は必ず出てきてしまいます。
ゴルフ場にとって、健全な進行をする為には時間調整枠は必要不可欠なのです。
しかし、「利益を捻出する」為には時間調整枠は不必要です。
時間調整枠が8時台9時台にそれぞれ1組あれば、OUTIN合計で4組、計16名のゴルファーの来場を放棄している事になります。
1人10,000円プレー費を払っていれば、毎日16万円のロスです。月間で480万円。年間で5,000万円以上のロスになります。
こんなことをしてゴルフ場を運営する事を利益追求する株主が許すわけありません。
利益を追求するゴルフ場に当然時間調整枠はありません。
プレーするパーティー(組)はギチギチに詰まっています。
少しでもラウンド進行が遅れれば、後続組も全て遅れていきます。
従って、 「ハーフ3時間掛かった」「スタート時間が30分遅れた」「お昼が1時間半もある」「日没に掛かった」という事が起きてくる訳です。
もう一つ利益を追求する為に大きな役割を果たすのが経費の削減です。
ゴルフ場の固定費で大きいのは人件費です。
人件費の中で一番切られたのはキャディーです。
現在は、セルフプレーを選択するプレーヤーも増えました。
雨が降れば来場者が減り、キャディーも余ります。
ゴルフ場にとって多くのキャディーを抱える事は、不安定な固定費なのです。
結局、不安定な人件費でもあるキャディーを解雇し排除していったのです。
「俺はセルフでしかプレーしないから関係ないよ!」 という人も多いと思います。
キャディーはプレーヤーの補助をする為の仕事だけではありません。
実はゴルフ場におけるキャディーの役割は大きいのです。
キャディーの仕事を書いてみましょう。
同伴プレーヤーのラウンドの進行を補助します。
前後組のプレーヤーのラウンド進行にも注意を払います。
ラウンド中はプレーヤー以外のディボット跡を埋めて歩きます。
バンカーで慣らしていない所を平らにします。
バンカーレーキの位置を直します。
グリーン上では目についたピッチマークを直します。
貴方はセルフプレーをしていて、こんな事ありませんでしたか?
「前の組が遅すぎる」「後ろから打ち込まれた」「グリーンがボコボコ」「ファーも言わないでボールがこっちに飛んできた」
「フェアウェーの芝が良くない」「ティーグランドがディボット跡だらけ」 「バンカーレーキが反対側ばかりで、こっち側に一個も無い」
キャディーが居ればこのような事案は一切無いとは言いません。
しかし、これらの問題を解消していたのは、キャディー達だったのです。
コースのレイアウトやクラブハウスなど、 利益追求する企業がゴルフ場を運営しても、ゴルフ場運営のHARDにあたる部分は大きくは変わりませんでした。
しかし、オペレーションや運営管理等の、SOFTの部分が大きく変わった気がします。
誤解が無いように補足しておきますが、
ゴルフ場の現場スタッフは良くやっていたと思います。
無理な運営をすればゴルファーに不都合が発生しクレームを受けます。
それは、現場スタッフも望むものではありません。
ゴルファーにより良い環境を提供したいと、現場スタッフも頑張っていました。
しかし各ゴルフ場の経営方針や当日のラウンド組数は本部からの指導が絶対です。
そうせざる負えませんでした。
何度も言いますが上場企業のゴルフ場の優先順位は結局、現場の声やお客様よりも、利益を重視する株主が大事なのです。
プレーヤーの声や現場スタッフの声は、株主の考えや取締役の考えの前では、残念ながらかき消されていたように思います。
悲しいかな、それが上場企業の責務であり正義であり、誰も何も間違っていないのですから責められません。
プレーヤー(良いプレー環境)///現場スタッフ(良い労働環境)///株主(利益追求)
ゴルフ場に求めているものが違うこの3者が
上場企業のゴルフ場という未知の領域にチャレンジした「アコーディアゴルフ」にてどう解決するのか。
その問題の答えを出す前に、全く違う理由で上場が廃止になる事になってしまいました・・・
次回へ続く
2017年2月23日付
では、ゴルフ場においては、通常のコースとどういう違いが出てくるのでしょうか?
まず、上場すればゴルフ場も徹底的な利益追求をしなくてはいけません。
「ゴルフ場だって企業体なので利益追求するのは当たり前でしょう?」と考えるかもしれません。
しかし、ゴルフ場は不思議とそうではありません。
赤字が出ても平気な施設も多く存在します。
親会社の税金対策でやっているようなゴルフ場もあります。
赤字分はメンバーの年会費で補填するゴルフ場もあります。
ゴルフ場には運営方法を決定する「理事会」という組織が存在します。株式会社の取締役会みたいなものです。
理事会はゴルフ場のメンバーで構成される事が多く、理事会で話し合う内容はゴルフ場の環境改善や安定した経営についてです。
理事会のメンバーは通常、ゴルフ場の社員でも役員でもない場合が多いので、
ゴルフ場運営が赤字の場合は、「どのように補填するか?」という事も議題内容になりますが、「利益を多く出す」為の議論は皆無と言っていいでしょう。
ところが、今回のテーマである上場企業のゴルフ場運営の場合は「利益を出す」事を必要とされますので、運営の根本が変わってきます。
少し経営の話になりますが、
利益を出すために必要なのは、売上を上げるか、固定費の削減です。
まず、ゴルフ場で売上を上げる方法の一つを書いてみましょう。
ゴルフ場でプレーヤー達は約7分間隔でスタートしていきます。
スタート時間は電車のダイヤと一緒で、一組がラウンド中に5分遅れると後続組も進行やスタートが5分遅れてしまいます。
遅れる組が数組出現し、遅延時間の合計が30分になったとします。
最終組のスタートは30分遅れます。ラウンドも2時間15分で廻るべきところ、2時間45分かかってしまいます。
そのような事態を回避するために、通常であれば1時間あたり7~8組がスタートするところ、1組減らして6~7組で進行していきます。
本来プレーできるスタート時間の1組を1時間あたり1組分あえて空枠にする事で、
8時台にスタートしたプレーヤーの進行が遅れても、 9時台のスタートのプレーヤーは遅延の影響を受けずに、定刻でスタートできるのです。
この空枠をゴルフ場では「時間調整枠」と呼びます。
ゴルフプレーはほぼ毎日遅延する組は必ず出てきてしまいます。
ゴルフ場にとって、健全な進行をする為には時間調整枠は必要不可欠なのです。
しかし、「利益を捻出する」為には時間調整枠は不必要です。
時間調整枠が8時台9時台にそれぞれ1組あれば、OUTIN合計で4組、計16名のゴルファーの来場を放棄している事になります。
1人10,000円プレー費を払っていれば、毎日16万円のロスです。月間で480万円。年間で5,000万円以上のロスになります。
こんなことをしてゴルフ場を運営する事を利益追求する株主が許すわけありません。
利益を追求するゴルフ場に当然時間調整枠はありません。
プレーするパーティー(組)はギチギチに詰まっています。
少しでもラウンド進行が遅れれば、後続組も全て遅れていきます。
従って、 「ハーフ3時間掛かった」「スタート時間が30分遅れた」「お昼が1時間半もある」「日没に掛かった」という事が起きてくる訳です。
もう一つ利益を追求する為に大きな役割を果たすのが経費の削減です。
ゴルフ場の固定費で大きいのは人件費です。
人件費の中で一番切られたのはキャディーです。
現在は、セルフプレーを選択するプレーヤーも増えました。
雨が降れば来場者が減り、キャディーも余ります。
ゴルフ場にとって多くのキャディーを抱える事は、不安定な固定費なのです。
結局、不安定な人件費でもあるキャディーを解雇し排除していったのです。
「俺はセルフでしかプレーしないから関係ないよ!」 という人も多いと思います。
キャディーはプレーヤーの補助をする為の仕事だけではありません。
実はゴルフ場におけるキャディーの役割は大きいのです。
キャディーの仕事を書いてみましょう。
同伴プレーヤーのラウンドの進行を補助します。
前後組のプレーヤーのラウンド進行にも注意を払います。
ラウンド中はプレーヤー以外のディボット跡を埋めて歩きます。
バンカーで慣らしていない所を平らにします。
バンカーレーキの位置を直します。
グリーン上では目についたピッチマークを直します。
貴方はセルフプレーをしていて、こんな事ありませんでしたか?
「前の組が遅すぎる」「後ろから打ち込まれた」「グリーンがボコボコ」「ファーも言わないでボールがこっちに飛んできた」
「フェアウェーの芝が良くない」「ティーグランドがディボット跡だらけ」 「バンカーレーキが反対側ばかりで、こっち側に一個も無い」
キャディーが居ればこのような事案は一切無いとは言いません。
しかし、これらの問題を解消していたのは、キャディー達だったのです。
コースのレイアウトやクラブハウスなど、 利益追求する企業がゴルフ場を運営しても、ゴルフ場運営のHARDにあたる部分は大きくは変わりませんでした。
しかし、オペレーションや運営管理等の、SOFTの部分が大きく変わった気がします。
誤解が無いように補足しておきますが、
ゴルフ場の現場スタッフは良くやっていたと思います。
無理な運営をすればゴルファーに不都合が発生しクレームを受けます。
それは、現場スタッフも望むものではありません。
ゴルファーにより良い環境を提供したいと、現場スタッフも頑張っていました。
しかし各ゴルフ場の経営方針や当日のラウンド組数は本部からの指導が絶対です。
そうせざる負えませんでした。
何度も言いますが上場企業のゴルフ場の優先順位は結局、現場の声やお客様よりも、利益を重視する株主が大事なのです。
プレーヤーの声や現場スタッフの声は、株主の考えや取締役の考えの前では、残念ながらかき消されていたように思います。
悲しいかな、それが上場企業の責務であり正義であり、誰も何も間違っていないのですから責められません。
プレーヤー(良いプレー環境)///現場スタッフ(良い労働環境)///株主(利益追求)
ゴルフ場に求めているものが違うこの3者が
上場企業のゴルフ場という未知の領域にチャレンジした「アコーディアゴルフ」にてどう解決するのか。
その問題の答えを出す前に、全く違う理由で上場が廃止になる事になってしまいました・・・
次回へ続く
2017年2月23日付