祭りの後で
台風19号は甚大の被害をもたらした。
ゴルフビジネスをする私にとっては台風後のゴルフ場の状態が気になる。
今回の台風は大きい台風の為に、降水量も降水時間も多く、前回上陸の15号のような風被害ではなく水害だった。
実は、ゴルフ場は降雨に強い。グリーンもフェアウェーもコースの地下には人工的な排水設備が作ってある。
降雨時コースに水溜りが出来るとゴルフはプレーが出来ない。通常の雨天でも営業中止を余儀なくされる。
365日営業したいゴルフ場にとって、排水システムは必須なのだ。
むしろ、ゴルフ場の営業に支障をきたすのは、コース併設の山崩れ・がけ崩れ、電気水道の生活インフラの欠損、
高速道路ICからの国道・県道などのアクセス導線が損壊する事など、外的要素の2次被害が大きい。
今回も多くのゴルフ場で2次被害に見舞われた。
そのほとんどが、川の氾濫等の水害によるものだった。
田舎のゴルフ場などは、ゴルフ場へ向かう道は河川の横に並行している事が多い。
川が流れる場所は土地が低く平らだから道路も作りやすいのだと思う。
平坦な道路があるのでガス管や電気線など生活インフラが道路には凝縮されている。
道路が決壊する事は、車の走行や物流だけでなく、ライフラインも無くなってしまう。
今回の河川の決壊は、長野の千曲川・埼玉県川越・栃木県佐野・茨城県水戸・海なし県や海岸から離れた場所が多い。
河川は海岸に近いほど水量が増えて決壊のリスクが高まると思っていたが、そうではない事がわかった。
千曲川を除くと、ほとんどの決壊場所が海へと繋がる河川の本流ではなく、支流の川が氾濫している。
支流の水が一級河川の本流に流れ込む際に、本流の水量が増えると当然水圧も増える。
支流からの水は本流の水圧が大きいので上手く融合できないのであろう。
支流の河川の合流地点は徐々に流れが溜り、そこから遡り護岸の一番弱い部分で決壊してしまうようだ。
今回決壊した護岸の工事をしたら水害は解消するのであろうか?そうではないと思う。
補強した部分は次回は決壊しないと思うが、そこより弱い部分が次回は決壊するはずである。
降雨量が減るか、河川の処理能力を上げないと解決はしないのだと思う。
地球温暖化で降雨量は増える事があっても減るわけがない。
河川の横幅も拡げる限界がある。一体どうすればいいのか?
昔の政権与党を奪取した某議員は「事業仕分け」と称して「50年に一度の水害を防ぐ河川のスーパー堤防計画」を反故にしてしまった。
その時の予算は「税金の無駄使い」という概念だったが、今回の水害で多くの人が亡くなりスーパー堤防建設の数十倍の規模の予算が必要になった。
勿論、堤防があったとしても、これだけでの大災害を防げたかどうかは疑問に残る。
地震や津波や洪水、自然災害が多いこの国で防ぐ手立てあるのだろうか?
現在、日本ではラグビーワールドカップで非常に盛り上がっている。
私も学生時代、母校の応援で国立競技場へ行った記憶が蘇る。
JAPANが強いので毎日楽しく過ごしている。
日本とスコットランドの予選の大一番が台風直撃の翌日だった。
大会運営本部は中止も視野に入れていた。
私も残念だが中止になるであろうと考えた。
台風通過後の、施設の破損状況や浸水・観客の交通インフラ・イベントの安全性・様々の事を考慮すれば中止は致し方がない。
しかし、大会は無事に開催されて大成功に終わった。
私は試合にも興奮したし歓喜に震えた。
しかし、一番驚いたのはその後のある事実を知ったことだった。
会場であった横浜総合国際競技場(日産スタジアム)において大会中止の可能性を検討したのは、私が考えた上記の理由だけではなかった。
実は横浜総合国際競技場は、大雨時に隣に流れる鶴見川の水を流し込む巨大な貯水池だったのだ。
施設を水没させる事で鶴見川の水位をコントロールしている。事実今回も水没させた。タイトル上部写真を見てほしい。
サッカーゴールが水没しているので2mはあるだろうか?競技場の廻りの土地に全てに水が入ったらしい。
施設自体の1階駐車場等も当然水没。
そのおかげで今回の台風で隣の多摩川は決壊したが、鶴見川は決壊を免れた。
更に驚く事は、約12時間後に行われるワールドカップを行うために、ポンプを使って水量が減った鶴見川へ貯水を戻したのである。
施設運営者が鶴見川の決壊・新横浜近辺の洪水を防ぎ、たった12時間後に7万人を集客しワールドカップを成功させた。
こんなことが出来るのか?
私が大会運営本部なら、貯水を始めた時点で絶対に中止にしていた。
理論上は理解できるが実際にこのような施設を本当に作ってしまった。
またその奇想天外な施設がきちんと機能している。
何か一つでも歯車が狂ったら開催は難しい。しかしスタッフはそれらを完璧にやり遂げた。
まさに本物のプロフェッショナル!!!
日本の土木技術や日本の施設運営能力は凄いと思う。
この地球上で気候変動に対応するハードウェア―やシステムのソフトを世界中に輸出すべきだ。
きっと世界中で日本人しかできない。
ラグビーでJAPANが頂点に近づく事を願うが
日本土木や日本人の施設運営能力の世界一を一足先に感じさせてもらった。
最後に、
今回の台風19号で被害にあった方へ、心よりお見舞い申し上げます。
次回へ
2019年10月15日付