消費者の購買構造の変化2

今回は大学の論文みたいになりますが、私の持論を展開します。
未来予想とでも言いましょうか・・・ 勿論、この予想が将来当たるとは限りませんが、経営者である私は現在の行動指針にしています。

前回のコラムは、デパートの話をしました。 ここ10年で大きく小売業や販売業の在り方が変化しているように思います。 ECイーコマース(ネット通販)の発達で店舗販売(小売業)の将来が不透明です。

内容が全く同じ物なら安い方が売れます。
店舗を構えて商売する以上、家賃・備品・水道光熱費・人件費が、商品とは別に小売価格に転嫁されます。
しかしECならば、販売するコストは、倉庫や流通、販売WEB等の物流コストだけで済みます。
当然、ECの方が商品を安く販売できます。

各業界では脱店舗の傾向を強く感じます。

「BOOKOFFやHARDOFF」と言った、一時は飛ぶ鳥を落とす勢いの中古販売ビジネスは現在大変苦戦しています。 一方「メルカリ」などの個人での中古販売アプリは空前絶後の大盛況です。

レンタルビデオの「TUTAYA」も方向転換を余儀なくされています。 NETでの映画配信やCSなどで、オンデマンドで見たい映画は、PAYチャンネルで借りにいかなくても自分の家で簡単に見られます。

あのユニクロの柳井社長ですら、昨日記者会見を行い、「無駄な商品は作らない。アリババやアマゾンなどのECサイトと提携を図る。」 といっているので、店舗ビジネスからの脱却を考えている気がします。

「出来る事ならば固定店舗を持たない」という事が、今後のビジネスの傾向になるのであろうと思います。

同時に、マンション価格や家賃も下がると思っています。商売に最高の立地ではない限り、家賃を払い商売するメリットは少ないと感じます。 日本の人口は今後減ります。(移民政策とか政府が対策すれば別ですが・・)。
ましてや都心部には高層ビルが乱立して、テナントや住居、オフィスのスペース等のフロアーや不動産の戸数は拡大の一途です。 どう考えても近い将来、需要と供給が合わなくなります。
現在、投機目的で不動産価格が上がっているとすれば、不動産バブルは再度弾けると思います。


話題を消費に戻しましょう。
消費には購買型消費と体験型消費に分けられます。 分かりやすく言えば、購買型消費とは、「有形の物品」、体験型消費とは「無形のサービス」と言えばわかりやすでしょうか?
購買型の消費は、その多くがEC(ネット通販)になるでしょう。 直接見て買いたいと思われる生鮮食料品でさえ、ネットスーパーの台頭でECにシフトしています。

体験型消費もECになりつつあります。
例えば、「インターネットで予備校の講義を自宅で受講する」「会社の経営者が税理士に決算を作って貰う」「旅行の予約をする」 このような無形のサービスもEC化しています。

一方で体験型消費は、ECに合わない物もあります。
「美容室で髪の毛を切る」「ゴルフをする」「ディズニーランドへ行く」「豪華なレストランでイタリアンを食べる」 このような「自分の身体を使う」ものや「感情が伴う」体験型消費はECが発達しても店舗や場所が必要だと思います。

私は無形のサービスを中心に展開していますが、今後の店舗販売や小売業のような「有形な消費」の生き残りに大きなヒントを感じています。
今までの店舗販売は商品充実して揃っている店舗において「物を売る」事で「顧客の物欲を満たす」事が重要でした。
しかしECが発達した現在、店舗で購買してもらうには2つの要素が必要だと感じています。
「物を買う事で物欲を満たす」のであれば、ECがベストです。品ぞろえが豊富で最安値で購入できます。

通販で買えるのに、わざわざ店舗に行くのは
「今すぐ欲しい」「暇だから」「医者に行くついでがあるから」「会社帰りに寄れるから」と言った自分の感情を満たす必要があります。
寿司が食べたければ出前を取ればいい。でも「店舗の中で大将と話しながら旬な物を食べたい」という感情があるからワザワザ店舗に行くのです。

「購入」という行為以外に、「顧客の感情を満たす」事が現在の店舗に求められるのです。

「今すぐ欲しい」なら営業時間を長くして、在庫や品ぞろえを多くする。
「暇だから」なら複合施設やモールを作り時間をつぶせる設備を作る。
「医者に行くついでがあるから」なら病院の側に店舗を作る。
「会社帰りに寄れるから」なら駅の側に店舗を構える。
家の側にもラーメン屋はあるが、そこでしか食べられない話題のラーメンがあるので、1時間かけてお店に行き、更に1時間並んでも食べたい。

「購入という行為+顧客の様々な感情を満たす」ことが、リアル店舗に求められています。

貴方がユニクロで3000円の赤いフリースを買う時に、通販で買いますか? それともバスで片道20分乗り交通費が往復で500円掛かるユニクロの店舗に行きますか?
わざわざ店舗に行く人は、「購入」という行動以外に何かもう一つ以上の別の目的があるのではないでしょうか?
商品を販売する以外に「顧客が感じる目に見えない別の目的・ニーズ」を現在の小売業は捉えられていないし、顧客に提案創出できていない。
だから現在の様に販売手法が「顧客の感情は無視しても、ECを使い商品を売る事だけを行えばよい」に傾向してしまう。
顧客もEC上で価格を比較し、一番安い所で購入する。 このままだとコストが掛かるリアル店舗の多くは将来本当に淘汰されてしまう。

何度も言いますが、 これからのEC以外の小売りは、購入という行為も含めた顧客の潜在欲求の2つ以上の要素を満たす必要があります。
その要素で一番重要なのは、実は店舗のスタッフと顧客との間の、信頼関係や人間関係なのかも知れない。

店舗では物を買うだけではなく、人と話し、会話があり、売る側も買う側も喜びや感謝が伴う。そこには物欲を満たす以外の感情があるはず。
リアル店舗こそ、人なのではないだろうか? 現在の私の持論なのです。



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2017年10月15日付

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