ゴルフ場運営企業の上場廃止4

PGMが上場を果たした時に、ローンスターは多くの株を手放さずに手元に置きました。
株を公開しても経営権を自社で維持する為です。
一方、アコーディアゴルフの上場時には、アコーディアに少しの株を残し、親会社のゴールドマンサックスは全株式を市場に放出しました。
この差は大きな意味を持ちます。

アコーディアは誰でも株を購入でき、第三者がアコーディアの自社保有数を上回る事も可能です。 筆頭株主は誰になるのか?上場後の実質的な経営を握るのはどこの企業なのか?分からない状態でした。


そんな時に、考えてもみなかった事態がおこります。

なんと同業のPGMが、アコーディアゴルフに買収を仕掛けます。
PGMが一気に日本のゴルフ場の大多数を所有しようと考えたのです。

PGMから株の売却要請に応じずにアコーディアは抵抗しました。一挙に流れが敵対的買収(TOB)に変わります。
市場からアコーディアの株式を手に入れようと、PGMが一般投資家から買いまくります。
アコーディア(株)は値段が乱高下しながら上昇を続けます。

そこである変化が起こります。
いつのまにかアコーディア株を大量に保有している「レノ」という企業の存在が発覚します。
それは、敵対的買収が行われていて株価が上がり続ける戦場に、「儲かりそうだ!」と土足で乗り込んでくるハイエナファンド。
以前に株価操作で社会的に問題になり、有罪になった旧村上ファンド(村上世彰氏)の娘の会社です。

実際にはこの会社がキャスティングボードを握りました。
株の保有率は既に20%近くまであがっていました。
その脅威を簡単に言うと・・・
「我々(レノ)の言うとりにしないと、PGMにレノの持ち株を売却するぞ!」
「我々がPGMに株を売却すれば、アコーディアはPGMに乗っ取られてしまうぞ!」
とアコーディアゴルフに対して脅しをかけたのです。
レノの要求は、市場に出ているアコーディアの株を、アコーディア自身で買い戻す事でした。(自社株購入)

自社株を購入する事は株主にはメリットがあります。 一株当たりの資産価値が向上します。
保有株が増えるので、敵が買収を掛けても乗っ取られにくいです。
同時にアコーディア(株)を買い続けますので、株価は高値を付けます。

レノのように既にアコーディア株を持っている人は、株の価値が上がり、値段も高騰するので、当然喜びます。 同時に、PGMにとっては買収する金額が高くなり株の購入を続けられません。
結局、アコーディアゴルフはPGMからの乗っ取り防御の為になりますので、大株主の命令であるレノの要望に従ったのです。

しかしアコーディア自身はお金が沢山ある会社ではありません。
どうやって自社株を買い戻す現金を手に入れるかが問題です。


そこで、アコーディアゴルフは驚くべき奇策に出ます。

70%近くの土地や建物の資産を、シンガポールのファンドに売却しました。
ゴルフ場運営のノウハウはありますが、土地や建物の資産が無い会社になったのです。
アコーディアゴルフは、ゴルフ場の運営専門会社となり、土地建物を保有する会社と別会社という事になります。
(ホテルや旅館プロデュースの、今人気の星野リゾートも資産を持たない運営専門の同じ形態の会社です。)
資産を売却したお金でアコーディアは自社株を買取り続けました。


やがてこの1件で、PGMはアコーディアの敵対的買収から手を引くことになります。
アコーディアは資産の無い会社になりましたから、その会社を買収しても旨味が少ないからです。 ゴルフ場運営のノウハウは既にPGMも持っていますので、資産の無くなったアコーディアを買収する必要はありません。
ある意味(レノ)の存在が敵対的買収に終止符を打たせました。


その後アコーディアゴルフは大株主の(レノ)の存在に怯えて言いなりになってしまいます。
レノはアコーディアゴルフに対して、外部取締役の解任と、株主配当の倍増を要求していました。
株主配当も増額とは、ゴルフ場は今まで以上に経費を削減し、徹底的に利益をあげることを要求されます。
そしてゴルフ場運営の利益で得た何十億という内部留保資金は、本来のゴルフ場改善やゴルファーへのサービスに充てられるのでは無く、 投資家である(レノ)等に対して株主配当として渡されていきました。

これでは、アコーディアの各ゴルフ場には改装や改善する資金が廻って来ません。
施設は老朽化します。お金が無いので人件費も増やせません。
当然コースクオリティーは下がっていきます。

事実上(レノ)に乗っ取られたアコーディアゴルフにとって、ゴルフ場とは
ゴルファーの顧客満足度を上げる施設から、 株主に対しての利益を配当する道具となっていたのです。





次回へ続く
2017年2月25日付


BRAND