ゴルフの未来3

ゴルフ人口が増えない理由のもう一つは、インフラ(環境)の問題があります。
これからゴルフをやろうと思っても、いきなりコースデビューできる訳ではありません。
まず近くのゴルフ練習場からです。その練習場がもう無いのです。
昔は街のあちこちにゴルフ練習場がありました。

都心の大きな練習場として、東京タワーの下にあった芝ゴルフ。東新宿の日テレゴルフガーデン。
1球打つと20円以上!!6球も打てば缶コーヒーが飲めます。アプローチなんて勿体無くて打てませんでした。
ものすごく高価ですが、それでも他に無いので行ったものです。

今はどうでしょう?
都心部でも200yクラスの大きな練習場はほとんど無くなりました。
唯一あるのは、神宮第二球場ぐらいです。
それも、元々野球場ですから、高校野球のシーズンになると使えません。

都心部の土地の高騰と合わせて、30年前位から徐々にゴルフ練習場は無くなってしまいました。
練習場は1辺100m以上の広大な土地を使います。固定資産税も高額です。そのスペースがあれば大きなビルが建ちます。
貴方が賢明な経営者ならゴルフ練習所を運営しますか?それとも50階建ての高層ビルを建てますか?
答えは言わなくてもわかりますよね・・・

では、郊外に行けばゴルフ練習場はあるのでしょうか。
確かにあります。しかしながら郊外の練習場も少なくなってきました。

イメージして下さい。
ゴルフ初心者が、練習場の仕組みも、ゴルフのルールも、道具の事も良く分からず、たった一人で郊外の練習場に勇気だして行きますか?
行かないのであれば、会社の上司や先輩が、休日にわざわざ初心者の自宅まで出向き、練習場に連れてってくれますか?

飲みに行くような感覚で、会社帰りに練習できる環境が無ければ、上司が部下にゴルフ指南をできません。
会社の側(繁華街)にゴルフ練習場が無いという事は、大袈裟ではなく、今まで日本が育んできたゴルフ伝承の文化が途絶えるという事なのです。

これからゴルフをやる人は、いきなりコースデビューできる訳ではありません。
ゴルフデビュー者にとって、ゴルフ場でプレーする事はあくまで最終目的になります。 大事な事は、ゴルフにデビューするため、ゴルフに接する機会を一番最初に与える場所はゴルフ練習場なのです。

確かにインドアのゴルフ施設は増えました。
しかしその多くはゴルフスクールです。
スクールと練習場は明らかに違います。
スクールはゴルフを教わるところです。練習する場所ではありません。料金も練習場に比べれば高価です。
ゴルフをプレーする人は万人が練習しますが、スクールに通う人は全体の1割程度です。
また、これからゴルフデビューする人が、全員ゴルフスクールに入るわけでもありません。
明らかにスクールと練習場は役割とマーケットが違うのです。


都心部での1人当たりの練習場打席売上の採算性は現在では5,000円以上です。
1回のゴルフ練習に5,000円以上を払える人はそう多くはありません。
ゴルファーにとって、都内の練習場は割高ですから需要も下がります。お客が来なければ経営者は収益が苦しくなります。
1打席5,000円とる為には、打席に練習する以上の付加価値を付けるしかありません。
ですから練習場という商品から、スクールという商品に変更し、単価を上げる。
従がってインドア練習場のほとんどがインドアゴルフスクールになるのです。

大事な事をまとめます。


×「ゴルファーの減少」 ⇒ 「ゴルフ練習場の減少」
◎「都市部の土地の高騰」 ⇒ 「ゴルフ練習場の減少」 ⇒ 「ゴルフへの機会損失」 ⇒ 「ゴルファーの減少」

ゴルフ練習場の需要が無くなっている訳では無く、 都心部の土地の高騰やスペースの採算性で、現状ではビジネスとしてのゴルフ練習場運営が都心部では不適格になってしまったのです。

消費者マインドが冷えて、純粋にゴルファーをする人が減ったのではありません。
新しいゴルファーを創出続けてきた日本のゴルフ文化や、身近なゴルフ施設が淘汰されている事が問題なんです。
これらの事実をゴルフ業界の上層部にいる方たちは、恐らくほとんど理解していません。
物事の本質が分かっていないので、ゴルフ人口を増やす対策として、「高齢者だけではなく、若い人を増やす!女性を増やす! 」と言った具体性に乏しく、机上の空論だけ押し付けても結果が出ないのは当然なのです。
私見として厳しい言い方をすれば、小手先の対策を繰り返す事で、奇跡的な大ゴルフブームが起こる事を、ひたすら待ち続けているだけのように見えています。


次回はどうすればいいのか対策を考えましょう・・・
2017年2月13日付


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